川口マーン恵美「ヨーロッパから民主主義が消える」

書評です。

ヨーロッパから民主主義が消える (PHP新書)

ヨーロッパから民主主義が消える (PHP新書)

  • 作者: 川口マーン惠美
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: 新書

ドイツ在住の筆者だからこそわかる、現在のヨーロッパの分裂に原因について書かれた本です。

昨年に話題となったイギリスのEU離脱ですが、イギリスだけでなくフランスでは「国民戦線」が、ドイツでは「PEGIDA」が、イタリアでは「五つ星運動」が、というようようにそれぞれの国でEU離脱を叫ぶ組織が勢力を拡大しています。

筆者はこのような勢力が伸長する原因を「ギリシャ危機によるEU全体の経済危機」と「シリア内戦によるヨーロッパへの難民の流入」であると述べています。

そもそもEUとは自国通貨をユーロに変更したり、シェンゲン協定による国境解放などによって自国の主権を譲り渡すことによってはじめて成り立つ経済機構です。

そのような中で、ギリシャ危機によってEU各国の利害関係がむき出しになるような争いが続いた結果、自国中心のナショナリズムが叫ばれるようになってしまいました。そのような中で追い打ちになったのが、シリア内戦による難民問題です。崇高な理念を掲げるドイツと難民を救う余裕がないハンガリーなどの国によって、EUの統合の理念が揺らぎ始め、とどめの一撃となったのがフランス同時多発テロでした。

そしてそれがイギリスのEU離脱、さらに言えばイスラム差別を煽るトランプ大統領の誕生につながったのだと思います。

この本によって、私がぼんやりと考えていたことがはっきりと言語化された気がします。これからフランス大統領選によって極右政党が躍進するのか注目を集めていますが、躍進した場合EUの分裂は決定的になるでしょう。

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